令和4年度 医工連携人材育成講座 開催レポート

 

~医療機器産業への新規参入、事業拡大のための中核人材育成に向けて~

パンフレット(PDF:700KB)

第1回「医工連携の概論」  ※オンライン開催

日時 2022年6月2日(木)16時00分~18時00分

講師

谷下 一夫 氏  一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ 理事長
柏野 聡彦    東京都医工連携HUB機構 プロジェクトマネージャー

内容

オリエンテーションでは、本講座をオーガナイズした日本医工ものづくりコモンズ理事長の谷下一夫先生から各講義の学びのポイントをご紹介いただきました。また、東京都医工連携HUB機構プロジェクトマネージャーの柏野聡彦から本講座の全体構成や各講義のねらい、受講生の属性、医療機器開発実績、本講座に期待することを紹介しました。
講義では、谷下先生から「医療者とものづくり工学者と共創する次世代医療」をテーマに、医工連携の歴史、医療ニーズに基づく医工連携の考え方、臨床現場との対話と連携の重要性について講義をいただきました。続いて、東京都医工連携HUB機構の柏野聡彦プロジェクトマネージャーから、「無理なく円滑な医工連携のかたち ~製販ドリブンモデル~」をテーマに、医療機器産業に円滑に参入するための考え方、製販企業とものづくり企業との連携体構築に向けたPRの考え方に加え、コロナ禍で進んだ医工連携のDX(デジタルトランスフォーメーション)の動向について、コラボレーション創出の事例を踏まえてのお話がありました。
講義後には、受講生と講師によるオンライン交流会を開催しました。各自が自己紹介を兼ねて「気になる学びのキーワード」とそのキーワードを選んだ理由をお話しいただき、活発な意見交換と交流がおこなわれました。

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第2回「医療機器の保険収載の基礎 前編」  ※オンライン開催

日時 2022年6月16日(木)16時00分~18時00分

講師

河原 敦 氏   薬事コンサルタント

内容

第2回は薬事コンサルタントの河原 敦氏をお招きし「医療機器の保険収載の基礎1 〜医療機器の保険上の評価制度〜」という演題でご講演いただきました。
医療機器開発においては「当初から出口を考える」ことが重要です。保険適用の有無は、その医療機器の医療機関における継続的使用に大きく影響することから「出口戦略」のきわめて重要な要素となります。当初から出口を考えることの重要性から、本講座は「保険収載」を最初(第1回のオリエンテーションを除く)に学ぶプログラム構成としています。
本年度の保険収載のセミナーは2回に分けて開催し、その第1回目となります。医療機器が保険収載されるためには「保険適用希望」をおこなう必要があります。保険適用の法的な位置づけ、保険適用希望から保険収載までのプロセス、保険適用の対象となる医療機器、保険適用の区分、薬機法上の承認との関係など、事例を交え、ポイントをご紹介いただきました。また、診療報酬改定について、その枠組み、改訂のプロセス、最近の傾向について、具体的事例を交え、ポイントをご紹介いただきました。
交流会では、講義中に寄せられた質問や受講生から「何ごとも仕組みを知ることが大切」「経済課相談」「予測売上根拠」といった学びのキーワードが共有され、一つひとつに河原氏から回答やコメントをいただきました。

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第3回「医療機器の保険収載の基礎 後編」  ※オンライン開催

日時 2022年6月23日(木)16時00分~18時00分

講師

河原 敦 氏   薬事コンサルタント

内容

第3回は第2回に引き続き、薬事コンサルタントの河原 敦氏をお招きし、「医療機器の保険収載の基礎2〜医療機器の保険収載戦略〜」という演題いただきました。
医療機器の開発・導入計画と保険適用戦略、プログラム医療機器の保険適用、保険適用の難度の高い医療機器、など保険適用希望等に関する戦略上の要点についてご紹介いただきました。また、令和4年度診療報酬改定について、とくにプログラム医療機器の保険適用を中心に、そのポイントや留意点について解説されました。
一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ理事長の谷下 一夫氏の総括では、医療現場のニーズを具現化、実用化するうえで、早い段階で保険収載という「出口」を見据え、戦略を立案することの重要性が触れられました。
交流会では「機能区分の統合化」や「チャレンジ申請」、「不採算再算定」といった学びのキーワードが挙げられました。

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第4回「医薬品医療機器等法の基礎」  ※オンライン開催

日時 2022年7月6日(水)16時00分~18時00分

講師

大竹 正規 氏  米国医療機器・IVD工業会 RAQA委員会 副委員長

内容

第4回は薬機法の基礎を学ぶ講座で、一般社団法人米国医療機器・IVD工業会薬事・品質保証(RAQA)委員会 副委員長、診断・治療機器委員会 副委員長の大竹 正規氏をお招きし、「医薬品医療機器等法の基礎~基本と動向、押さえるべきポイント~」というテーマで講義をしていただきました。 薬機法の基本、医療機器の特徴、クラス分類から申請区分、手続きの全体像が解説されました。また、最近の診療報酬の方向性も紹介。講義のまとめでは、ゴールは新しいビジネスを開始することではなく継続可能なビジネスに育てることであるとし、ゴールを見据えたリバースプランニングの重要性が強調されました。 学びのキーワードを共有しあう交流会では、「診療報酬において開発コストも加味して評価される時代は終わった」「新サービスによる既存リソースの有効活用と、患者アウトカムに着目して評価される時代へ」など診療報酬に関する考え方や、「審査員はSTEDから見る」など申請審査に理解を深めることができたといった感想が交わされました。

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第5回「医療機器流通の実際~医療機器を売るために知っておくべきこと~」  ※オンライン開催

日時 2022年7月21日(木)16時00分~18時00分

講師

矢部 文明 氏  株式会社ホギメディカル 営業管理部 次長

内容

第5回では、医療機器の流通について株式会社ホギメディカル 営業管理部 次長 矢部 文明氏を講師に招き、「医療機器流通の実際~医療機器を売るために知っておくべきこと~」をテーマにご講義いただきました。医療資源は有限であり、持続可能な運営を病院は求められており、医師のタスクシフトやDX推進に加え、感染対策へのニーズが高まっているといった国内の医療機関の現状から、こうした医療機関にどのような経路で医療機器は流通しているのかが解説されました。また、市場調査、商品計画、販売課都合、広告宣伝、販売促進などのマーケティング活動における公正競争規約のポイントと心得については具体的な事例が示されました。 交流会では「販売には規制だけでなくローカルルールも意識 」といった学びのキーワードが共有されたり、薬事・品質関連を担当する受講生からは「承認をとれたものがどう売れていくか」に直接関与することが少なく、興味深かったという感想が寄せられました。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代の医療機器のマーケティングのあり方についての意見が交わされ、時代とともに変わりゆく可能性を感じる機会となりました。

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第6回「医療機器分野への参入・医工連携の実践」  ※オンライン開催

日時 2022年8月4日(木)16時00分~18時00分

講師

菊地 貴裕 氏  株式会社三洋 国内事業推進課
波田野 真人 氏 安井株式会社 開発部
前多 宏信 氏  株式会社フジタ医科器械 代表取締役

内容

第6回の人材育成講座では、医工連携に取り組む企業3社から講師をお招きしました。
合成樹脂加工商社として70年以上の歴史がある株式会社三洋の国内事業推進課で医工連携に取り組む菊地 貴裕氏からは「医療機器分野への参入・医工連携の実践」をテーマにした講演の中で素材や加工技術など自社の得意分野を活かし、どのように医療分野に参入したのかが紹介されました。参入の過程で法規制や医療ニーズに対応する難しさに直面しながら開発に取り組んだ製品が紹介されました。
続いて、プラスチック成形技術で医療機器産業に参入した安井株式会社 開発部の波田野 真人氏からは「医療機器分野への参入・医工連携の実践~参入、機器開発における苦労話」をテーマにご講演いただきました。数ある医療ニーズから開発テーマを選定するプロセス、開発から上市、さらには上市後の海外展開への流れに加え、それぞれの段階で直面した課題に対する対処などが具体的に語られました。
最後に、医工連携に積極的な製販企業としても知られる株式会社フジタ医科器械の代表取締役 前多 宏信氏に「一周回って社内に集積した失敗から学ぶ医工連携に関するノウハウ」 をテーマにご講演いただきました。一問一答スタイルで失敗からの学びを、ニーズ収集、秘密保持や知的財産、試作製造、臨床評価、公的資金獲得、海外での展示会出展など実際に起こり得る検討課題を挙げながら共有いただきました。
交流会では、他社とうまく協業して開発する場合に、コストや社内から出てくる意見とのバランスや、支援機関等とのコミュニケーションの取り方の工夫などについての質疑応答が交わされました。

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第7回「臨床工学技士と医工連携」  ※オンライン開催

日時 2022年8月18日(木)16時00分~18時00分

講師

仲條 麻美 氏  順天堂大学医学部附属順天堂医院 臨床工学室
稲垣 大輔 氏  神奈川県立保健福祉大学 イノベーション政策研究センター

内容

第7回の人材育成講座では、2人の臨床工学技士を講師にお招きしました。
順天堂大学 医学部附属 順天堂医院 臨床工学室の仲條 麻美氏からは、「臨床工学技士による医工連携の現状と展望」 をテーマに、臨床工学技士の業務内容や、東京都臨床工学技士会の取り組みとして、日本医工モノづくりコモンズと開催する臨床工学技士向けのセミナーや東京都医工連携HUB機構と開催する臨床ニーズマッチングなどが紹介されました。医療機器開発の認定制度が設立される構想があるなど、医療機器産業に貢献する臨床工学技士の未来と医工連携への積極的な関わりを感じられる講義となりました。
神奈川県立 保健福祉大学 イノベーション政策研究センター 稲垣 大輔氏からは、「臨床工学技士の役割とニーズドリブン手法による医療機器開発」をテーマにお話いただきました。稲垣氏自身が開発途上国への医療支援に関心を持たれていることから、臨床工学技師の専門性を活かした取り組みにも触れられました。医療現場のニーズが健在的なものなのか、潜在的なものなのかを見極め、真のニーズを理解する重要性を強調し講義を締めくくりました。
交流会では、「Must to haveとNice to haveを突き詰める」などの学びのキーワードが共有され、医療者からの要望=真の開発ニーズに直結しないといった、医療ニーズの目利きに対する関心の高さを垣間見るような意見交換がおこなわれました。

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第8回「世界の先端を切り拓く医工連携のポテンシャル」  ※オンライン開催

日時 2022年9月9日(金)16時00分~18時00分

講師

光嶋 勲 氏   広島大学医学部附属病院 形成外科 科長、 国際リンパ浮腫治療センター 教授

内容

第8回は「世界の先端を切り拓く医工連携のポテンシャル」をテーマに広島大学病院形成外科 科長、国際リンパ浮腫治療センター寄付講座 教授の光嶋 勲 氏に講義をいただきました。
形成外科の中でも、直径1mm以下のリンパ管、静脈、神経をつなぐ手術をスーパーマイクロサージャリーと言い、光嶋氏は、この領域のパイオニアとして新たな手技を開発し、様々な治療を可能にしてきました。これまでに光嶋氏が手がけた手術の数々と、使われる医療機器についての紹介があり、これからの手術として損なわれた部位を再建する医療の発展と、その発展を支える医工連携のポテンシャルが語られました。
一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ理事長の谷下一夫氏からは、乳がんや子宮がんの治療直後に、リンパ管と静脈をつなぐことでリンパ浮腫を防ぐ「予防外科」という異なる分野の融合などに触れ、光嶋氏が切り拓く世界観に着目するコメントが寄せられました。
交流会では、「ヒトの解剖は変えられる」や「予防外科」といった学びのキーワードが挙げられ、医療がもたらす可能性に思考を巡らす機会となりました。

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第9回「特許と医工連携」  ※オンライン開催

日時 2022年9月29日(木)16時00分~18時00分

講師

齋藤 拓也 氏  特許業務法人太陽国際特許事務所 副所長 弁理士
神谷 直慈 氏  かみや特許事務所 中小企業診断士・弁理士

内容

第9回の医工連携人材育成講座では、「特許と医工連携」をテーマに、正林国際特許 商標事務所 副所長で弁理士の齋藤 拓也 氏と、かみや特許事務所 代表、弁理士で中小企業診断士の神谷 直慈 氏を講師にお招きしました。
齋藤氏からは「医⼯連携における知財戦略・標準化戦略 ~開発事業を成功に導く知財・標準化戦略の概要と解説~」という演題で講義をいただきました。 実際に起きた特許を取り巻く企業間の攻防を事例に挙げ、事業における守りの特許と攻めの特許の位置付けに触れながら、事業を伸ばす知財戦略についてわかりやすく紐解いていただきました。
続いて、神谷氏からは「医工連携と知財トラブル 〜医と工のスマートな知財連携へ〜」 という演題で講義をいただきました。 知財面でのトラブルは開発のブレーキとなるため、いかに未然あるいは早期に解決しておくかのポイントが事例とともに紹介されました。神谷氏の経験に基づく医療機器開発に特化した解説であったため、受講生にとって医工連携を進める上での自社の立ち位置から検討すべきことへの理解を深める機会となりました。
交流会では、「『技術の追求』ではなく『発想の転換』が必要であることを学んだ」、「データが出る前であっても特許を出そうという意識を持つことが知財戦略では求められることを理解した」といった意見が交わされました。

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第10回「これからの医工連携・医療機器開発の展望・期待」  ※オンライン開催

日時 2022年10月13日(木)16時00分~18時00分

講師

土肥 健純 氏  東京電機大学 名誉教授、東京大学 名誉教授
伊関 洋 氏   至仁会グループ 介護老人保健施設 遊 施設長
         東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 研究所特任顧問

内容

医工連携人材育成講座の最終回は、医工学を築きあげてこられた2人のキーパーソンを講師にお招きしました。
東京電機大学 名誉教授で東京大学 名誉教授の土肥 健純 氏からは「これからの医工連携 ~医療機器開発の展望・期待~」 をテーマに、医用工学の存在意義や治療機器開発の困難さ、人工臓器とコンピュータ外科、医療機器のIoT化とセキュリティ、医療機器開発に際しての注意点等についてご講義いただきました。講義の終わりに、学会や医学系研究者など医療機器開発に関わるそれぞれの立場の課題に触れ、中小企業が医療機器開発に適している理由なども挙げていただきました。
至仁会グループ 介護老人保健施設 遊 施設長で、東京女子医科大学先端生命医科学研究所研究所特任顧問の伊関 洋 氏からは「個別化介護(介護の現状と将来)」 をテーマにご講義をいただきました。医学と工学の連携のあり方から医工連携に求める要件が解説されました。また、介護現場における医療・福祉機器開発に向けた取り組みと具体的なニーズを紹介し、受講生に共同開発を呼びかけました。 一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ理事長の谷下一夫氏からは、土肥氏と伊関氏から医工連携の歴史と本質を突き詰めるものづくりの重要性を強調するコメントがありました。
最終回の交流会では、受講生だけではなく、受講生以外の製販企業にも参加を呼びかけました。「医師が行う処置動作を真似ることが本質ではない 」といった学びのキーワードが共有され、本質を学ぶ大切さと、本質を知っていれば応用が効くということを考える場になりました。

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