令和3年度 医工連携人材育成講座 開催レポート

 

~医療機器産業への新規参入、事業拡大のための中核人材育成に向けて~

パンフレット(PDF:800KB)

第1回「医工連携の概論」  ※オンライン開催

日時 2021年7月5日(月)16:00-18:00

講師

谷下 一夫 氏  一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ 理事長
柏野 聡彦    東京都医工連携HUB機構 プロジェクトマネージャー

内容

オリエンテーションでは、本講座のプログラム全体の構成や各講義のねらいを再確認するとともに、事前アンケートに基づき、受講生の属性や医療機器開発の実績、本講座に期待することをご紹介しました。
講義では、日本医工ものづくりコモンズの谷下一夫理事長より、医工連携の歴史と全体像、医療ニーズに基づく医工連携の考え方、臨床現場との対話と連携の重要性について学びました。
東京都医工連携HUB機構の柏野聡彦プロジェクトマネージャーから、医療機器産業に円滑に参入するための考え方(製販ドリブンモデル)、製販企業とものづくり企業との連携のきっかけとしてのPRの考え方、医工連携におけるデジタルトランスフォーメーションについて紹介されました。
講義後には、受講生が小グループに分かれ自己紹介と質疑応答をおこなう「交流・質疑応答の時間」が設けられ、各講義の「学びの共有」と「参加者同士のネットワーキング」が進められました。
ウェビナー形式の講義とミーティング形式の意見交換を組み合わせるスタイルは、本講座の初の試みでしたが、受講生は、各講義で印象に残ったキーワード「学びのキーワード」を紹介しあい、活発な意見交換と交流がおこなわれました。

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第2回「医薬品医療機器等法の基礎」  ※オンライン開催

日時 2021年7月16日(金)16:00-18:00

講師

大竹 正規 氏  米国医療機器・IVD工業会 RAQA委員会 副委員長

内容

米国医療機器・IVD工業会 RAQA委員会 副委員長の大竹 正規氏をお迎えし、「医薬品医療機器等法の基礎 ~基本と、動向、押さえるべきポイント~」についてお話しいただきました。薬機法の基本と考え方をわかりやすく整理して解説していただき、法改正の特徴などにも理解を深めることができた講義となりました。「ゴールは販売開始ではなく、継続可能なビジネスにして普及し、社会に貢献すること」と繰り返し強調されました。講義の後の質疑応答では、保険適用や申請区分など質問や感想も多く寄せられました。
交流・意見交換の時間では、講義の振り返りのほか、Zoomなどを使ったオンラインミーティングで自己紹介をするための方法などが共有されました。

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第3回「医療機器の保険収載の基礎」  ※オンライン開催

日時 2021年8月6日(金)16:00-18:00

講師

河原 淳 氏  薬事コンサルタント

内容

第3回講座では、薬事コンサルタントの河原淳氏をお招きし、「医療機器の保険収載の基礎」をテーマにご講義いただきました。 「保険収載」は、医工連携人材育成講座の多くの回で聞かれるキーワードです。保険収載の対象となる医療機器や収載区分、保険収載のプロセス、承認と保険収載の関係、診療報酬改訂など実例を交えた解説がなされました。医療機器の薬事・保険戦略を考えるヒントを得られる講座となりました。

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第4回「医療機器流通の実際 ~医療機器を売るために知っておくべきこと~」  ※オンライン開催

日時 2021年8月19日(木)16:00-18:00

講師

矢部 文明 氏  株式会社ホギメディカル 営業管理部 次長

内容

医療機器開発は、製品コンセプトの検討段階から出口戦略を考えることが重要であり、国内の商習慣、市場の特徴を理解する必要があります。第4回の医工連携人材育成講座では、株式会社ホギメディカル 営業管理部 次長 矢部 文明氏をお迎えし、「医療機器流通の実際 ~医療機器を売るために知っておくべきこと~」という演題で、日本の病院環境、医療機器産業の現状、販売の流れと各種規制、医療機器のマーケティングについて横断的にご講演いただきました。中でも医療機器の開発から販売の段階で、製品開発と薬事承認の間の上市前評価の重要性が強調されました。講演の締めくくりで、矢部氏は、COVID-19による医療業界の営業活動がどのような影響を受けているかに触れ、有限かつ持続可能な運営が求められる医療資源を守るため、一人ひとりの行動の積み重ねで感染者数減少につなげていこうと呼びかけました。
今回の交流・質疑応答では、グループ分けをせず全体での講座の振り返りと質疑応答がおこなわれました。

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第5回「医療機器分野への参入事例」  ※オンライン開催

日時 2021年9月8日(水)16:00-18:00

講師

竹元 盛也 氏  日進工業株式会社 代表取締役社長
橋本 雅史 氏  リサーチコーディネート株式会社 代表取締役
波田野 真人 氏 安井株式会社 開発部 課長

内容

第5回の医工連携人材育成講座では、「医療機器分野への参入事例」をテーマに、医療機器産業に参入を果たした3社をお招きしました。 日進工業株式会社 代表取締役社長の竹元 盛也 氏は、「当社の医療業界参入のきっかけとその後の展開」と題して、従来の射出成形に対して、独自の技術で打ち出した新規素材を使って開発した100%樹脂製の医療用チューブ鉗子を紹介。SUS製鉗子の4分の1の軽さでありながら、炭素繊維含有により把持力はSUS製と同等であることや、MRIに反応しないなどのメリットが挙げられました。開発の背景には、国内の鋼製鉗子メーカーの減少や、軽量化のニーズへの対応などがありました。医療現場から寄せられるフィードバックを元に付加価値向上を目指します。
リサーチコーディネート株式会社 代表取締役の橋本 雅史 氏からは、「動作分析技術の医療機器への応用」としてAIモーションキャプチャを使った動作分析サービスについて紹介されました。映像から被写体の動きを数値化する技術を頸髄症の診断支援や、患者の噛み合わせを解析する歯科分野への応用を狙います。東京都医工連携HUB機構と東京都中小企業振興公社のサポートを得て歯科領域の製販企業との連携につなげ、第11回医療機器産業参入促進助成事業にも採択。その後の動きとして、試作が完成し、製品化に向けた開発について報告がありました。 安井株式会社 開発部課長の波田野 真人 氏からは「新規医療機器開発物語 ー ゼロからイチへ。とその先 ー」と題して、独自のプラスチック成形技術で培った医療分野での実績とその歩みが共有されました。医療機器部品製造で実績を積み、医療機器受託製造、自社ブランドの医療機器製造販売へと展開した流れと、各過程で直面する薬事や市場の把握、海外展開における模倣品対策を含む知財等に関する課題をどのように解決したか、あるいは、解決に向けて取り組んでいるかの解説がありました。
交流・質疑応答では、3つのグループに分かれ、講師が各グループに参加して、講座の振り返りと質問に答えました。全体でのまとめで挙げられた「失敗ストーリーを聞きたい」という声に多くの参加者が頷く場面がありました。

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第6回「医工連携の実践事例」  ※オンライン開催

日時 2021年9月16日(木)16:00-18:00

講師

前多 宏信 氏  株式会社フジタ医科器械 代表取締役
山森 伸二 氏  日本光電工業株式会社 荻野記念研究所 リサーチアドバイザー
林 正晃 氏   第一医科株式会社 代表取締役

内容

第6回は、「医工連携の実践事例」をテーマに、製販企業3社から講師をお招きしました。 株式会社フジタ医科器械 代表取締役 前多 宏信 氏は、「医工連携の実践 中小企業なりの医工連携 〜オープンイノベーションを活用した医工連携〜」と題し、オープンイノベーションやアウトソーシングなどの活用事例を紹介。開発中に他社による新技術やイノベーションにより製品化に至らなかったり、製品寿命が短くなったりといった事態を防ぐためにも「スピード感」を意識することが大事で、次世代を生み出し続けることが排他的な市場形成につながると述べ、出来ない事を自ら解決するよりも、アライアンスで経験を集積し、自社のノウハウや実績に繋げる考え方を強調しました。また、コロナ禍により、訪問して面談や商談をすることが困難な時期を乗り切るためのスキルとして、オンライン活用における実践・手法が紹介されました。
日本光電工業株式会社 荻野記念研究所 リサーチアドバイザー 山森 伸二 氏は、「医工連携の実践 − 失敗に学ぶ医工連携 −」をテーマに、医療現場のニーズに応え、市場規模も期待されたはずの医療機器が、どのような失敗をめぐり、販売中止など普及に至らなかったのか、その背景を製品ごとに解説しました。その一方で、今でも追随を許さない成功事例も紹介し、医工連携で重要なポイントを、ニーズ検証から事業化まで段階ごとに挙げ、どんなに苦労があっても、「医療現場で役立てば報われる」と締めくくりました。
第一医科株式会社 代表取締役 林 正晃 氏からは、「医工連携の実践事例 - 販売実績から遡る医工連携の起点 -」をテーマにお話しいただきました。既存の医療機器の改良から持続可能な事業を確立した医工連携事例の紹介の中で、蓄積するノウハウから新たな医療機器開発の可能性を発掘したり、関連医療学会と足並みを揃えることや政策の方向性を掴むことなど、連携体制を取り巻く環境にも柔軟に対応したりすることの重要性について触れました。製販企業として同社が直面した課題、揺らいだ社内のマネジメント体制など、組織の危機をどう乗り越え、業績を回復・成長させたのかという経営者としての談を語り、「コンプライアンスとガバナスがあってこそのイノベーション」と講演を結びました。
交流・質疑応答では、3つのグループに各講師が参加し、講義で答えきれなかった質問に答えました。

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第7回「臨床工学技士とは」  ※オンライン開催

日時 2021年10月6日(水)16:00-18:00

講師

山本 裕子 氏  東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンター
保科 充紀 氏  社会福祉法人聖隷福祉事業団総合病院 聖隷三方原病院 CE室
野澤 隆志 氏  杏林大学医学部付属病院 臨床工学室

内容

臨床工学技士は、医療現場で医療機器を扱うスペシャリストであり、最近では、医工連携の場面でも存在感が高まります。第7回の医工連携人材育成講座では、3名の臨床工学技士をお招きし、医療現場での役割や医工連携活動についてご講演いただきました。 東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンターの山本 裕子氏からは、「東京都臨床工学技士会における医工連携の実績と今後の展望」をテーマにお話しいただきました。その中で、臨床工学技士とは何かから、東京都臨床工学技士会が開催するセミナーやマッチング会を通じた臨床工学技士の医工連携を促進する活動が紹介されました。今後の展望として、1人でも多くの臨床工学技士が参加できるよう裾野を広げ、成功事例を残していくことが重要であるとの考えが示されました。
聖隷福祉事業団総合病院 聖隷三方原病院 CE室の保科 充紀氏からは、「臨床工学技士の業務と医工連携について」と題し、自身が関わる透析、内視鏡、人工呼吸器に関連する業務において、それぞれの業務で使われる機器とその役割を詳しく解説いただきました。ものづくり企業や製販企業に対しては、臨床工学技師が医工連携に関わる良さとして、医師をはじめ他職種の医療従事者と連携をとるほか、医療機器のスペシャリストとして機器を多角的に評価し、機器購入にも関与することから機器のコスト感覚に長けている点などが挙げられました。 杏林大学医学部付属病院 臨床工学室 野澤 隆志氏からは、「手術室における臨床工学技士の現状とこれからの未来」についてお話をいただきました。手術室での業務の中でも、内視鏡手術関連業務や医療画像を用いたナビゲーション業務を中心に、手術で使う機器とセッティングの手順、術中の業務を具体的な動画や画像を用いて紹介されました。また、医療業界で課題とされる医師の時間外労働を改善するためのタスクシフトが進められ、法令改正に伴い、手術での助手業務が一部、臨床工学技士に移行するなど、医療現場での役割にも時代に応じた変化が起きていることにも触れました。
交流・質疑応答の部では、講師が1人ずつ3つに分かれた各グループに入り、講義の振り返りや質疑応答をおこないました。受講生間でチャットでの自己紹介や連絡先等も活発に交わされました。

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第8回「世界最先端最高峰の医療に学ぶ医工連携のポテンシャル」  ※オンライン開催

日時 2021年10月20日(水)16:00-18:00

講師

光嶋 勲 氏  広島大学医学部附属病院 形成外科 科長
        国際リンパ浮腫治療センター 教授

内容

第8回は、広島大学医学部附属病院 形成外科科長、国際リンパ浮腫治療センター 教授の光嶋 勲氏をお招きし「日本のものづくり技術が切り拓く次世代のスーパーマイクロサージャリー」をテーマにご講演いただきました。 直径0.3mmの血管や神経、リンパ管をつなぐことで可能になった治療と、その手技を支える国内の超微小外科機器のほか、4Kなどの外視鏡、マイクロサージャリーの手術支援ロボットの最新動向が紹介されました。講演中に紹介された針や糸、持針器などは、微小な組織をつなぐにあたっての技術的特徴にも触れ、実際の手術ではどのように使われるのかを解剖学的なイラストを用いながら解説いただきました。
交流・質疑応答では、グループ分けをせず全体でのディスカッションをおこないました。参加した受講者全員が質問や感想を述べ、それぞれに学びある場となりました。

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第9回「特許と医工連携」  ※オンライン開催

日時 2021年10月27日(水)16:00-18:00

講師

中島 淳 氏   特許業務法人太陽国際特許事務所 会長
神谷 直慈 氏  株式会社IP-Business.pro 代表取締役

内容

第9回は「特許と医工連携」をテーマに、特許業務法人太陽国際特許事務所 会長の中島 淳氏と株式会社IP-Business.pro 代表取締役の神谷 直慈氏をお招きしました。中島氏からは、「特許の基本と医工連携~優れた発明をして成果を上げるために~」という演題で、知財とビジネスの関係、計画的に良いアイデアを創る、発明ビジネス成功の鍵、情報防衛と秘密漏洩、適切な評価と対価を話題に講義をいただきました。
「医工連携と知財トラブル ~医と⼯のスマートな知財連携へ~」という演題で講義をされた神谷氏は、よくある知財トラブルの事例をコンソーシアム型や医工連携型といった、タイプ別に解説されました。早期に知財契約における合意をするなど、医と工のスマートな知財連携のポイントについて触れ、公知のガイドブックやガイドラインを参考にすることを呼びかけました。
交流・質疑応答の部では、参加者全員が質問や感想を述べ、中島氏と神谷氏が一つひとつに回答。参加者が各々に抱える疑問や悩みを解決するヒントを得られる機会になりました。

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第10回「これからの医工連携・医療機器開発の展望・期待」  ※オンライン開催

日時 2021年11月18日(木)16:00-18:00

講師

土肥 健純 氏  東京電機大学 名誉教授
         東京大学 名誉教授
伊関 洋 氏   至仁会グループ介護老人保健施設 遊 施設長
         東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 研究所特任顧問

内容

最終回は、アカデミアで医工学を築き上げて来られたキーパーソンを講師にお招きし、医工連携・医療機器開発の本質、これまでの歴史、これからの展望と期待について講義をいただきました。 東京電機大学名誉教授で、東京大学名誉教授の土肥 健純氏からは「これからの医工連携・医療機器開発の展望・期待」と題してご講演をいただきました。冒頭で医療機器のIoT化とリモートメンテナスのあり方や考え方に触れ、東京電機大学で開発する「敷布型マルチバイタルIoTモニタ」が独居老人の心電図や脈動等の生体情報をモニタリングする仕組みと構想を紹介。続いて進化する医工学として、三次元医用画像と手術用メカトロニクスを活用したコンピュータ外科、腹腔鏡手術支援ロボットの発展、手術中のナビゲーションシステムの課題へのアプローチなどが紹介されました。手術支援ロボットを含む医療機器の開発における要点のほか、医療機器開発に対する工学系と医学系研究者の課題、大企業と中小企業に見られる傾向が挙げられました。
至仁会グループ介護老人保健施設 遊の施設長で、東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 研究所特任顧問の伊関 洋氏からは、「個別化介護 Nursing-care 4.0」をテーマにご講演をいただきました。医工連携は、医学と工学とが縦割りではなく、その垣根を取り払って融合する形が重要であると強調。術中フローサイトメトリーによる悪性脳腫瘍迅速診断技術の開発や、手術中に術者の手を安定させる脳神経外科用手台ロボットなど東京女子医科大学の開発実績を挙げ、これまでの経験則に縛られず、新たな技術の台頭など変化に対応することが、これからの医療機器開発に求められているという話をされました。また、介護の領域では、3世代同居による家族介護に始まり、核家族化による地域共同体介護、少子高齢化による老老介護を経て、IoTの活用や個別化が進みつつある現在の介護の時代を、伊関氏は「Nursing-care 4.0」とし、3大介護とされる食事、入浴、排泄の場面における具体的な現状と、介護現場で必要とされる技術を挙げ、受講者に研究開発を呼びかけました。
交流・質疑応答の部では、受講者一人ひとりが質問や感想を述べ、土肥氏、伊関氏からコメントをいただいて、最終回を締めくくりました。

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