第12期 医療機器開発海外展開人材育成プログラム 活動レポート

開会式

日時

2024年6月14日(金)14:00~14:30

内容

開会式は、国立国際医療研究センターにて現地開催し、副病院長の廣井 透雄先生、医工連携室長の丸岡 豊先生をはじめ本プログラムにご協力いただく国立国際医療研究センターの先生方、第12期受講生の方々、東京都産業労働局商工部、アドバイザー、事務局が集いました。開会挨拶やプログラム概要説明、受講生を含む関係者の自己紹介を行いました。

第1回 講義「ベトナムの医療現場の実態を学ぶ」

日時

2024年6月14日(金)14:30~16:30

講師

国立国際医療研究センター 国際医療協力局  伊藤 智朗氏

内容

講義では、ベトナムにおける社会と医療環境の現状と近年の動きについて、統計、現地の写真、講師の実体験も織り交ぜてご説明いただきました。 ベトナムでは、経済発展に伴い、社会全体が質を求め始め、より質の高い医療のニーズに対応する市場が拡大しているといえます。それらを反映させる形で、一部のトップレファラルや省レベルの医療機関では医療レベル、サービスレベルが向上していますが、依然としてトップレファラルへの患者の集中が問題視されており、郡・コミューンレベルの下位医療機関も含めた全体のクオリティの底上げが重要とされています。また、施設間における差は拡大していると言え、概して、従来のように、上からの命令を待つだけ、海外からの「援助」を待つ姿勢の医療機関は向上がおそく、反面、自身で病院の革新的な運営を実施し始めた医療機関が向上しているといえ、いかにしてボトムアップを誘導するかが重要なポイントの一つといえます。そのため、これらのベトナムの医療全体の発展のためには、従来の「援助」という相手側が受け身にならざるをえない方式ではなく、皆様のような民間企業が「ビジネス」として、お互い責任をもって事業をすすめることが、ベトナムの持続性をもった発展のために重要であると思います。 「日本」のブランド価値はまだまだありますが、医療分野のIT化など分野によっては日本をしのいで、実践、実装を進めているものもあるため、日本としてはベトナムでビジネスをするにあたり、日本より劣っている医療現場として考えるのではなく、より戦略性をもって、お互いの向上をめざすパートナーとして展開していく姿勢が求められると考えられます。 また、ビジネスをするにあたっては、ベトナムは法律、規制、行政文書等の定められたこと通りにはならず、まだまだ個々の「人」次第の社会である点に留意するべきだということを学びました。

第2回 講義「インドネシアにおける医療機器展開を考える」

日時

2024年6月24日(月)14:00~16:00

講師

国立国際医療研究センター 国際医療協力局  清水 栄一氏

内容

講義は、参加者同士での意見交換、ディスカッションをはさみながら進める形式で、インドネシアにおける医療機器展開を考える機会となりました。インドネシア特有の医療機器に関する薬事や制度があり、現地で製品を展開する際の留意点、現地進出日系企業について教えていただきました。インドネシアは、東南アジア最大の経済規模を有する魅力的な市場であり、今後も医療機器ニーズは拡大していくことが予想されています。インドネシア市場へ参入する際の留意点のうちの一つは、自国製品を優遇する「国産品優先政策(P3DN)」です。国産品の使用を促進するような動きがあり、そのため自国でも生産できる類似品には輸入禁止措置が取られている製品があります。また、公立病院からの発注は、原則E-カタログというウェブサイトに掲載された製品のみとなります。国産化率(TKDN)40%以上の製品が国産品として、E-カタログに優先的に上位掲載されることとなっています。日本企業が市場参入する際には、現地代理店を通じた製品登録やE-カタログへの製品掲載など、P3DNへの対策が必要となります。一方で、国としては国内ニーズに合った製品の受け入れ、製造・開発、ジョイントベンチャー、技術移転などに積極的です。医薬品や医療機器の現地生産の強化を進めているため、展開の際には国内ニーズをしっかりと把握し、保健省の関心や政策に注視し、薬事規制や製品登録の最新情報を把握してゆく前向きな姿勢が必要だと学びました。 また、最後には、東京都との連携事業である「現地ニーズを踏まえた海外向け医療機器開発支援(略称:SMEDO)」を通じた国際展開のご説明をしていただきました。都内中小企業(製販企業、ものづくり企業等)が新興国の医療施設や医療機器販売代理店を実際に訪問します。現地ニーズを把握し医療機器開発に活かすとともに、市場攻略等のためのネットワークづくりを行うことを目的に実施しています。今年度も昨年度に引き続きインドネシアを実施国として募集を開始しています。特に、インドネシアでの製品展開を検討している企業にとって非常に有益な機会になると感じました。

第3回 講義「海外における医療機器管理の実情を知る ~主にベトナムの最新情報2024年版~」

日時

2024年7月5日(月)14:00~16:00

講師

国立国際医療研究センター 臨床工学室  深谷 隆史氏

内容

講義では、国際協力のこれまでとこれから、臨床工学技士が行っている国際協力の取り組み、そしてベトナムにおける医療機器研修を通した医療機器管理の実態や課題について、現地の写真等を見せていただきながら学びました。ベトナムでは、「DOHA(Direction of Healthcare Activities)」と呼ばれる研修事業が行われており、日本の臨床工学技士⇒国立拠点病院代表研修生⇒拠点病院及び下位病院の流れで、医療機器管理についての情報伝達、指導が実施できるよう研修を実施しています。この研修事業を通して、ベトナムの各拠点機関を訪れ年々、院内の医療機器管理の整備が進んでおり、ベトナムでは医療機器に対する安全性への取り組みが国家レベルでようやく取り組まれるようになりました。、ただ現場では、日本では保守が終了している機器を使用し続けていたり、ディスポーザブルの医療機器を再利用していたりする状況が確認できます。また、医療機器管理は整理整頓するだけではなく、衛生管理、メンテナンス等を徹底するも非常に重要です。まだ研修事業をはじめたばかりの医療機関においては、現在でも資材室等の保管場所の衛生面が悪く、ほこりや汚れがかなり目立っているため、医療機器管理体制の整備を進めていく必要があると思いました。

第4回 検討会

日時 2024年7月11日(木)10:00~13:00
内容

検討会では、受講生が1名ずつ、事前に作成したプレゼンテーション資料を用いて、自社の会社概要や海外展開状況、検討中の自社製品、展開先の国の状況分析、課題、今後のビジネスプランの仮説について発表しました。プレゼンテーション終了後、アドバイザーからはビジネスの観点や医療機器開発・海外市場への展開における規制等の観点からご意見・ご助言をいただき、他受講生からはご質問やコメントをいただきながら、プレ発表会に向けた資料ブラッシュアップのためディスカッションを行いました。今回の受講生は、展開先として、インドネシアもしくはベトナムを想定していますが、取り扱う製品はそれぞれ異なっているため、ディスカッションを通して、受講生同士の学びや気づきにもつながりました。これから海外展開を進めていくために、今後の講義や実習を受け、現地の市場動向や競合製品についてより深堀をし、ターゲットを絞るなど、最終報告会に向けてさらに具体的なビジネスプランを検討していきます。

第5回 実習「臨床現場での医療機器の実態を学ぶ」

日時

2024年7月26日(金)15:30~17:30

講師

国立国際医療研究センター 歯科・口腔外科診療科長  丸岡 豊氏

内容

実習では、国立国際医療研究センター(NCGM)にて、院内をご案内いただきながら、臨床現場で実際に医療機器がどのように使用されているのかを学びました。昨年度と比べて、院内の規制が緩和されており、生理検査室、放射線診断科、採血室、検査科、内視鏡室、人間ドックセンター、手術室前、ICU/HCU 前などかなり広範囲の見学をすることができ、受講生にとっても非常に貴重な機会だったと思います。院内ツアー後は、プレゼンテーションにて、NCGM の沿革や通常入ることのできない手術室内、ICU・NICU内についても、詳しくご説明いただきました。NCGM を含む日本の臨床現場では、医療機器管理のための環境や設備が非常に充実していると感じました。今回の見学で得た情報、気づきを、受講生の展開想定国と比較し、それぞれの今後の検討に活かしていきます。

プレ発表会 ※オンライン開催

日時

2024年8月29日(木)15:00~17:00

内容

これまでの講義、検討会でのディスカッションを通して学んだことをベースに、受講生が各自で現地について調査、検討し、自社製品のベトナム・インドネシアへの展開についてのビジネスプラン、展開における課題などについて発表するプレ発表会を開催しました。発表会には、東京都、事務局だけでなく、NCGM から多くの先生方、アドバイザー、過去受講生(メンター)なども参加してくださいました。受講生によって、海外展開実績や取り扱っている製品、展開する国が異なるため、各社に合った事業戦略や事業計画をより深く検討する必要があると感じました。発表後、ご参加いただいた皆様からも、今までのご経験・ご知見をもとに受講生へコメントやアドバイスをしていただきましたが、今後の講義や実習、医療現場で働く方々へのヒアリングなどを通し、最終報告会に向けてさらにビジネスプランのブラッシュアップを進めていきます。

第6回 実習「臨床現場での医療機器管理の実態を学ぶ」

日時

2024年8月30日(金)14:00~16:00

講師

国立国際医療研究センター 臨床工学室  深谷 隆史氏

内容

実習の始めには、国立国際医療研究センター病院(NCGM)内医療機器管理室にて、実際に使用されている医療機器を見せていただいたり、貸出から返却、消毒・清掃等までのメンテナンスの流れを教えていただいたりしました。医療機器管理システムを通して、病院内の稼働率を正確に把握し、適切な管理を行うことで、機器が運用される仕組みが作られているということが良く分かりました。後半は、日本における医療機器の現状、法規制、保守契約や病院における医療機器の保守点検・管理、耐用年数・期間、診療報酬などについて、講義形式で教えていただきました。病院が医療機器を購入する際は、「納入価格÷(収入-支出)」で減価償却期間を計算し、耐用年数の期間内に設定することを念頭に置く必要があると学びました。

第7回 実習「救命救急センターの実態を学ぶ」

日時

2024年9月6日(金)14:00~16:00

講師

国立国際医療研究センター 救急科  小林 憲太郎氏

内容

講義では、NCGM が多くの患者の受け入れ、医療の提供だけでなく、国立高度専門医療研究センター、特定感染症指定機関として、感染症その他の疾患についての調査、研究、医療技術の開発、医療従事者の研修等も行っていると学びました。また、東京都の救命救急を取り巻く現状を伺い、救急患者が迅速に医療を受けられるよう、地域の救急医療機関がお互いに協力、連携して救急患者を受け入れる東京ルールが存在していること、NCGM の救急科では軽症から重症まで傷病の種類に関わらず全ての救急患者に 24 時間対応する地域中核型総合救急医療施設ならびに災害拠点病院としての体制整備、教育、国際医療協力を行っていることを教えていただきました。講義後、救命救急センターを見学させていただき、救急搬送受け入れから処置をするまでの流れや、使用されている医療機器、設備、情報管理システムなど、実物を見ながら説明していただき、受講生の学びがより深まりました。

特別講義 ※オンライン開催

日時

2024年9月19日(木)15:00~17:00

講師

独立行政法人国際協力機構(JICA)  民間連携事業部  佐藤 直之氏
                ベトナム事務所ホーチミン出張所  田島 久氏
                インドネシア事務所  西郡 智子氏

内容

日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行う独立行政法人 国際協力機構(JICA)の皆様にご講義をしていただきました。初めに、開発途上国の課題解決に貢献しうる国内民間企業等の海外ビジネスを支援する「中小企業・SDGs ビジネス支援事業」の概要についてご説明いただきました。JICA では、ODA を通じて築いてきた開発途上国政府とのネットワークや信頼関係等を活用し、民間企業と価値の共創に取り組んでいます。本事業の海外展開支援メニューとして、「ニーズ確認調査」と「ビジネス化実証事業」の 2 種類があります。途上国ビジネスの知見に富むコンサルタント(JICAコンサルタント)が伴走し、採択企業の途上国ビジネスを支援する仕組みがあり、各社のビジネスフェーズに合わせて、これらのメニューを活用することが可能と学びました。その後、対象国である、ベトナムとインドネシアの事務所に駐在のお二人から、現地の保健医療分野の基本情報、JICA 事業採択事例などをご紹介いただきました。海外展開は、競合の存在や言語の壁、現地企業や大学との協業、許認可手続き等、様々な障壁があり、簡単ではありません。中長期的な視野も含め、このような事業を活用し、現地についてしっかりと把握する必要があると考えます。