第11期 医療機器開発海外展開人材育成プログラム 活動レポート

開会式

日時

2023年6月23日(金)14:00~14:30

内容

開会式を国立国際医療研究センターにて現地開催し、副院長 兼 医工連携室長の丸岡 豊先生をはじめ本プログラムにご協力いただく先生方、第11期の受講生の方々、アドバイザー、事務局が集いました。開会挨拶やプログラム概要説明、受講生を含む関係者の自己紹介を行いました。

第1回 講義「ベトナムの医療現場の実態を学ぶ」

日時

2023年6月23日(金)14:30~16:30

講師

国立国際医療研究センター 国際医療協力局  伊藤 智朗氏

内容

講義では、統計、現地の写真、講師の実体験も織り交ぜてご紹介いただきながら、ベトナムの社会と医療環境の現状と近年の動きについて学びました。ベトナムでは、経済発展に伴い、健康関連ニーズも高まってきており、市場拡大の可能性が充分にあります。トップレファラルや省レベルの医療機関では医療レベル、サービスのレベルが向上している一方で依然として医師数、看護師数、病床が足りておらず、また、郡、コミューンレベルの下位医療機関ではまだまだ全般的なレベルをあげていかなければなりません。さらには、ベトナムの医療機関では、医療行為やケアの多くを患者家族が担っているため、同じ医療機器でもそれを使うユーザーを明確にする必要があります。また、ベトナムは法律、規制、行政文書等の定められたものより、まだまだ個々の「人」次第の社会である点や、医療機器開発にあたっては、価格やメンテナンスといった点に留意する必要があると考えられます。

第2回 講義「インドネシアでの医療製品展開について」 ※オンライン開催

日時 2023年7月3日(月)14:00~16:00
講師 国立国際医療研究センター 国際医療協力局  清水 栄一氏
内容

講義では、インドネシアの医療市場の最新動向や現地で製品を展開する際の留意点について学びました。インドネシアは、人口2.7億人以上で、ASEAN最大のマーケットを有しており、医療機器に関しては他分野の2倍近い増加率で市場が拡大しています。その一方で、自国製品を優遇する「国産品優先政策(P3DN)」があり、インドネシア国内で製品展開する際には、E-カタログへの製品掲載や現地代理店を通じた製品登録など、事前に十分な対策が必要です。しかし、インドネシア側は輸入のみではなく、国内ニーズに合った製品の受け入れ、製造・開発、技術移転などに積極的で、医薬品や医療機器の現地生産の強化を進めているため、企業側も前向きに自社製品を展開し、技術移転していく、積極的な姿勢が求められていると感じました。

第3回 講義「医療機器管理の実態を学ぶ」 ※オンライン開催

日時 2023年7月14日(金)14:00~16:00
講師 国立国際医療研究センター 臨床工学室  深谷 隆史氏
内容

講義では、国内の医療機器関連の法規制の概要、安全規格、臨床工学技士が行っている国際協力の動向、そしてベトナムにおける医療機器の管理の実態や課題について学びました。だんだんと院内の整備が進み、新しい機器を取り入れ始めてはいるもののまだまだベトナムでは医療機器に対する安全性への認識が薄く、日本では保守が終了している機器を使用し続けていたり、ディスポーザブルの医療機器を再利用していたりしています。ベトナムへの製品展開を検討する際には、現地の法規制を踏まえて、販売ルートの確立、保守・メンテナンス体制の構築、現地語でのマニュアルの整備、現地スタッフの育成など、さまざまな対策を講じるべきだと学びました。

第4回 検討会

日時 2023年7月25日(火)10:00~13:00
内容

検討会では、受講生が事前に作成した資料を用いて、会社概要、海外展開を検討中の自社製品、展開先の国の状況分析、課題、ビジネスプランの仮説について発表しました。1社ごとにアドバイザーより質問、コメントをいただいたうえで、検討資料のブラッシュアップのためのディスカッションを行いました。今回の受講生は、業種や製品・サービスが多種多様であるため、ディスカッションを通して、受講生同士の学びや気づきにもつながりました。これから自社が海外でビジネスを展開していくために、今後の講義や実習を受け、現地の市場動向や競合製品について深堀をし、ターゲットを絞るなど、最終報告会に向けてさらに具体的なビジネスプランを検討していきます。

第5回 講義「臨床現場での医療機器の実態を学ぶ」

日時 2023年8月4日(火)14:00~16:00
講師

国立国際医療研究センター 副院長 医工連携室長  丸岡 豊氏

内容

講義では、国立国際医療研究センター(NCGM)にて、人間ドックセンターや生理検査室、病理検査室、内視鏡検査室など院内をご案内いただきながら、臨床現場で実際に医療機器がどのように使用されているのかを学びました。NCGM の沿革や通常入ることのできない手術室や ICU、NICU についても、お写真を用いて、詳しくご説明いただきました。NCGM を含む日本の臨床現場では、医療機器管理室、滅菌機材運搬室等、各部屋が綺麗に整理整頓されており、医療機器のメンテナンスに関しても非常に充実していると感じました。受講生は今回の見学で得た情報をこれから自社製品の展開を考えている国と比較し、今後の検討に活かしていきます。

プレ発表会 ※オンライン開催

日時 2023年8月22日(火)10:00~12:00
内容

プレ発表会では、受講生がこれまでの講義、検討会でのディスカッションをもとに、各自で現地について調査、検討し、自社製品のベトナム・インドネシアへの展開についてのビジネスプラン、展開における課題などについて発表しました。受講生によって、海外展開の実績、取り扱っている商材など異なるため、展開する国のニーズに合わせて、事業戦略や事業計画を検討する必要があります。アドバイザーや過去受講生であるメンターにご参加いただき、発表後、今までのご経験をもとに受講生へコメントやアドバイスをしていただきました。今後の講義や実習、医療現場で働く方々へのヒアリングなどを通し、最終報告会に向けてさらにビジネスプランのブラッシュアップを進めていきます。

第6回 実習「救命救急センターの実態を学ぶ」

日時 2023年9月8日(金)14:00~16:00
講師

国立国際医療研究センター 救急科  小林 憲太郎氏

内容

実習では、国立国際医療研究センター(NCGM)内の救命救急センターを見学させていただき、救急搬送受け入れから処置をするまでの流れや、使用されている医療機器、設備、情報管理システムなど、実物を見ながら説明していただきました。実際に、COVID-19罹患者は部屋を分け、使用後すべての部屋を空気洗浄するなど、院内における感染症対策を徹底していることがよくわかりました。その後の講義では、東京都の救命救急を取り巻く現状を伺い、NCGM が地域中核型総合救急医療施設として、一次(軽症)から三次(重症)まで多くの患者を受け入れていること、そのための体制構築、感染症対策、医療機器や情報システムの管理、シミュレーションなどを用いた人材育成等を行い、対応を強化していることを学びました。

第7回 実習「医療機器管理室の見学及びハンズオン」

日時 2023年9月15日(金)14:00~16:00
講師

国立国際医療研究センター 臨床工学室  深谷 隆史氏

内容

実習の初めには、国立国際医療研究センター(NCGM)内医療機器管理室にて、実際に使用されている医療機器を見せていただいたり、貸出から返却、消毒・清掃等までのメンテナンスの流れを教えていただきました。医療機器の稼働率を正確に把握し、適切な管理を行うことで、病院全体で必要な分の機器が運用される仕組みづくりが出来上がっていると学びました。その後は、シミュレーションセンターにて、生体情報モニタ、輸液・バイタルなどの遠隔モニタリングシステム、超音波診断装置等を用い、使い方をご説明いただいたり、最新の人体解剖学学習用アプリケーション「Anatomage Table」を見せていただいたりと、普段触れることのできない機器を実際に目で見て、肌で感じることのできる回となりました。

特別講義 ※オンライン開催

日時 2023年9月27日(水)15:00~17:00
講師

独立行政法人 国際協力機構(JICA) 民間連携事業部  佐藤 直之氏
                ベトナム事務所  小河 智子氏
                インドネシア事務所  西郡 智子氏

内容

特別講義では、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っている、独立行政法人 国際協力機構(JICA)の皆様にご登壇いただきました。前半には、企業のビジネス展開を支援することで、開発途上国の課題解決を目指す「中小企業・SDGsビジネス支援事業」の支援メニュー「ニーズ確認調査」「ビジネス化実証事業」「普及・実証・ビジネス化実証事業」について詳しくご説明していただきました。海外展開を希望する企業は各社のビジネス展開のフェーズに合わせて、これらの支援メニューを活用することができます。後半には、対象国である、ベトナムとインドネシアにおけるJICA事業実施例などをご紹介いただきました。同じ東南アジア圏でも、国によって医療機器開発に関する課題や方向性は異なるため、HP上にも掲載されている案件事例を参考にして、慎重に事業を展開していく必要があると学びました。

第8回 NCGMの医療スタッフへのヒアリング

日時 2023年9月
内容

受講生それぞれが海外展開したい国、製品等に関わる診療科の医療スタッフへ、個別ヒアリングを行いました。受講生は、このヒアリングを通して、先生方からいただいた貴重なご意見や詳細情報をもとに、検討会・最終報告会に向けた準備、ビジネスプランの再検討を進めていきます。

第9回 実習「コメディカルの業務の実態を学ぶ」

日時 2023年10月2日(月)14:00~16:00
講師

国立国際医療研究センター 国際医療協力局  馬場 洋子氏、藤井 めぐみ氏

内容

講義では、臨床業務に従事する看護師と診療放射線技師より、国内外の動向、NCGM内での業務内容、実際に使用されている医療機器の紹介、海外展開に向けたポイントについてお話しいただきました。看護師の業務は、ナースコールやセンサーマットの応答、日々の看護記録をはじめとし、点滴や投薬、来院、入院時の患者補助等で、夜勤を含む24時間体制です。今後はICTも活用して業務の効率化を図りつつ、引き続き患者さんの早期離床を目指して予防に取り組んでいくそうです。診療放射線技師はX線、CT、MRI、核医学を含む診断機器と放射線治療機器の精度管理や診療を中心に行っており、常に被ばくの可能性があります。そのため、線量計を身に着け、患者さんの動線を管理し、安全管理を行いながら日々業務に励んでいます。このようなメディカルスタッフの資格、業務内容は各国で異なるため、現地の状況、ニーズ、法規制等の他、医療スタッフの育成、修理やメンテナンス体制について検討することの重要性がわかりました。

第10回 検討会 ※オンライン開催

日時 2023年10月16日(月)10:00~13:00
内容

検討会では、受講生がプレ発表会後、講義・実習・ヒアリングなどを通して学んだことも踏まえて、改めて検討を重ねたビジネスプランの発表をしました。アドバイザーからは、前回の発表と比べて、どの発表も具体的で、数値化されたビジネスプランになってきているというコメントがありました。その後、各々で発表資料を1ページずつ確認しながら、全体の構成や掘り下げるべき箇所、強調すべき箇所、数字についてアドバイスをいただき、聞き手の立場から見た時により効果的で、理解しやすい発表になるよう、ブラッシュアップの時間を設けました。

最終報告会 ※オンライン開催

日時 2023年10月26日(木)15:00~17:00
内容

最終報告会には、副院長 兼 医工連携室長の丸岡 豊先生をはじめ、臨床工学室 臨床工学技士長の深谷隆史先生、本プログラムにご協力いただいた先生方、受講生の上長の方、過去のプログラム修了生でメンターの方、東京都産業労働局商工部、東京都医工連携 HUB 機構事務局が参加しました。
受講生から発表された各社のビジネスプランは、これまでの講義や実習、検討会でのディスカッションを通じて、より充実したものとなり、今後の海外展開に向けた活動に大変意義のあるものとなりました。

<最終報告会 次第>
・開会挨拶   東京都産業労働局商工部創業支援課 技術調整担当課長 川道 克祥氏
・報告①    安明日合同会社
・報告②    キッツマイクロフィルター株式会社
・報告③    チェスト株式会社
・報告④    中興化成工業株式会社
・閉会挨拶   国立国際医療研究センター病院 副院長 医工連携室長 丸岡 豊氏