第13期 医療機器開発海外展開人材育成プログラム 活動レポート

開会式

日時

2025年6月12日(木)14:00~14:30

内容

開会式は、国立健康危機管理研究機構にて現地開催し、国立国際医療センター副病院長の廣井透雄先生、臨床研究センター産学連携推進部次長の丸岡豊先生をはじめ本プログラムにご協力いただく国立健康危機管理研究機構の先生方、第13期受講生の方々、東京都産業労働局商工部担当者、アドバイザーが集いました。開会挨拶のあと、東京都医工連携HUB機構の柏野プロジェクトマネージャーより、プログラム概要説明を行いました。また、受講生を含む関係者の自己紹介を行いました。

第1回 講義「フィリピンの医療現場の実態を学ぶ」

日時

2025年6月12日(木)14:30~16:30

講師

国立健康危機管理研究機構 国際医療協力局 金森将吾氏

内容

講師の金森氏は、公衆衛生がご専門で9年間のフィリピン滞在の経験をお持ちで、講義では、フィリピンの概要説明、保健医療行政やサービス、医療機器の規制や調達について、実体験も交えながらご説明をいただきました。フィリピンは、人口1億900万人余り、平均寿命は66.4歳(2024WHO統計)で、人口ピラミッドはきれいな三角形をしています。死因に関しては、1990年と2021年の統計を比べると、感染性疾患と非感染性疾患の割合が逆転しました。フィリピンの医療施設は、公立と民間のものがあり、サービスの提供レベルによって、ライセンスが保健省より与えられています。医療の質の地域格差は大きく、地方の公立病院では専門医を確保することが困難な状況にあります。フィリピンでの医療機器の規制に関しては、現在は国内独自のものがありますが、ASEAN医療機器指令(ASEAN Medical Device Directive)の要求に合わせて、申請手続きのハーモナイゼーションが進められています。フィリピン国内で登録されている医療機器の国別登録件数をみると、全体で2万件ほどあり、うち米国が4,200件ほど、中国が3,900件ほどと全体の4割を占める状況です。日本は500件ほどで全体の2.5%となっています。今回の講義では、フィリピンでのビジネスを行うにあたっての基本的な情報を網羅的に学ぶことができました。

第2回 講義「ベトナムの医療現場の実態を学ぶ」※オンライン開催

日時

2025年6月30日(月)14:00~16:00

講師

国立健康危機管理研究機構 国際医療協力局 土井正彦氏

内容

講義では、統計データを参考に、ベトナムの概況や医療機器や医療提供体制に関しての現状と課題、ベトナムにおける日本の保健医療協力の変遷について学びました。ベトナムでは、2020年から医療DXの取組も本格化してきており、大病院を中心に電子カルテ(EMR/EHR)の導入が進行中であるため、この分野での市場拡大の可能性が充分にあります。一方で、インフラや規制の未整備、人材不足、プライバシー・セキュリティ意識の未成熟等の課題もあり、まだまだ全般的なレベルをあげていかなければなりません。また、ベトナムにおいてビジネスを展開していく上では、良い現地代理店と関係性を構築する必要があり、他企業との差別化のためにも、品質を担保し、信頼性を獲得したり、アフターサービス・教育体制を強化したり、現地ニーズに合わせた製品開発や仕様調整などを行ったりする必要があると学びました。

第3回 講義「臨床現場での医療機器管理の実態を学ぶ」

日時

2025年7月7日(月)14:00~16:00

講師

国立国際医療センター 臨床工学室 臨床工学技士長 深谷隆史氏

内容

講義のはじめに国立国際医療センター(NCGM)内の 医療機器管理室(ME室)を見学しました。ME室では、実際に使用されている医療機器を見せていただき、貸出から返却、消毒・清掃等までのメンテナンスの流れを教えていただきました。その後の講義では、日本における医療機器の現状として国内の医療機器に係る法規制、病院内における医療機器の運用の仕組み、医療機器の保守点検・管理、耐用年数・期間、診療報酬等について教えていただきました。さらに、ベトナムの現状として国内製品の販売に影響を与える懸念から、日本製を含む中古医療機器の導入が控えられているとお話がありました。また、ベトナム国内の公共施設以外では医療機器の電源端子などの規格が統一されておらず、国独自の電子機器の使用規格がそのまま適用されているケースがあるため、注意が必要という実情についても学ぶことができました。

第4回 検討会

日時

2025年7月23日(水)14:00~16:00

内容

検討会では、受講生が1名ずつ、事前に作成したプレゼンテーション資料を用いて、自社の会社概要や海外展開状況、海外展開検討中の自社製品、展開先の状況分析、課題、今後のビジネスプランの仮説について発表しました。プレゼンテーション終了後、アドバイザーからはビジネスの観点や医療機器開発・海外市場への展開における規制等の観点からプレ発表会に向けた資料ブラッシュアップについてご意見・ご助言をいただきました。今回の受講生は展開先として、フィリピンもしくはベトナムを想定しており、取り扱う製品や展開先はそれぞれ異なっているため、発表を通して受講生同士の学びや気づきにもつながりました。また、検討会後にはアドバイザーより、ビジネスプランを立てるにあたって、そもそも「戦略とは何か」についてご講義いただき、ビジネスプランについて理解を深める機会となりました。これから海外展開を進めていくために、今後の講義や実習を通じ現地の市場動向や競合製品の深堀、ターゲティングなど、最終報告会に向けてさらに具体的なビジネスプランを検討していきます。

特別講義 ※オンライン開催

日時

2025年7月29日(火)14:00~16:00

講師

独立行政法人 国際協力機構(JICA)  民間連携事業部   原 真人氏
                 ベトナム事務所   今成 百合子氏、濵崎 優磨氏
                 フィリピン事務所  坂本 玲氏

内容

海外展開を実現していくためのポイントを学ぶにあたり、独立行政法人 国際協力機構(JICA)の皆様に特別講義をしていただきました。JICAは日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。前半は開発途上国の課題解決に貢献しうる国内民間企業等の海外ビジネスを支援する「中小企業・SDGs ビジネス支援事業(JICA Biz)」の概要についてご説明いただきました。JICAでは、ODAを通じて築いてきた開発途上国政府とのネットワークや信頼関係等を活用し、民間企業と価値の共創に取り組んでいます。本事業の海外展開支援メニューとして、「ニーズ確認調査」と「ビジネス化実証事業」の 2 種類があります。途上国ビジネスの知見に富むコンサルタント(JICAコンサルタント)が伴走し、採択企業の途上国ビジネスを支援する仕組みがあり、各社のビジネスフェーズに合わせて、これらのメニューを活用することが可能と学びました。
後半は対象国であるベトナムとフィリピンの事務所の方から、現地の保健概況、JICA事業調査事例等をご紹介いただきました。今後JICAのHPでも公開されている採択事業等も参考にビジネスプランのブラッシュアップを行っていきます。

第5回 講義「臨床現場での医療機器の実態を学ぶ」

日時

2025年8月1日(金)14:00~16:00

講師

国立国際医療センター 歯科・口腔外科診療科長 産学連携推進部 次長 丸岡豊氏

内容

講義では、国立国際医療センター(NCGM)の沿革や院内ツアーで見学する場所をご説明いただきました。NCGM は感染症(HIV, 肝炎など)や国際医療, 総合医療を担う機関であり、2025 年 4 月 1 日に国立感染症研究所と国立国際医療研究センターが統合し、国立健康危機管理研究機構(JIHS)が発足しました。今回はそのうち臨床部門である国立国際医療センター内の人間ドックセンター、生理検査室、放射線診断科、採血室、検査科、内視鏡室、手術室前、ICU/HCU 前等の見学をさせていただき、各見学先では機器の使い方や役割をご説明いただきました。通常は入ることの難しい場所までご説明いただき、受講生にとっても大変貴重な機会となりました。今回の見学で得た情報、気づきを、受講生の展開想定国と比較し、それぞれの今後の検討に活かしていきます。

プレ発表会 ※オンライン開催

日時

2025年8月25日(月)14:00~16:00

内容

プレ発表会では、受講生がこれまでの講義、検討会を通して学んだことをもとに、各自で現地について調査、検討し、自社製品のベトナム・フィリピンへの展開についてのビジネスプラン、課題などについて発表しました。アドバイザーやメンター(過去受講生)にもご参加いただき、発表後は、これまでのご経験をもとに受講生へコメントやアドバイスをしていただきました。受講生によって、海外展開実績、取り扱っている製品など異なるため、領域や展開先のニーズに合わせて、事業戦略や事業計画を検討する必要があります。今後の講義や実習、医療現場で働く方々への個別ヒアリングなどを通し、最終報告会に向けてさらにビジネスプランの検討を進めていきます。

第6回 実習「救命救急センターの実態を学ぶ」

日時

2025年9月2日(火)15:00~17:00

講師

国立国際医療センター 救命救急センター・救急科 佐々木亮氏

内容

講義では、東京都の救命救急を取り巻く現状を伺い、救急出場件数が近年増加しているにも関わらず、救急隊の現場到着から搬送開始までの時間が平均約 30 分かかってしまっていること、またそれが全国ワースト 1 位であることを学びました。そのため、東京都では、救急患者が迅速に医療を受けられるよう、地域の救急医療機関がお互いに協力、連携して救急患者を受け入れる体制、東京ルールが存在しています。国立国際医療センターでは、1998 年より、救急専従医による診療を開始し、2010 年に救命救急センターとして認可されました。また、24 時間 365 日の救急患者の診療依頼はいかなる重症度や来院手段であっても原則として断らず、14 年連続救急車搬送件数 1 万件以上を更新し、東京都内で救急搬送件数も最多 11 回となっていることを学びました。講義後、救急外来、救急病棟、ICU/HCU、ヘリポート等を見学させていただき、救急搬送受け入れから処置をするまでの流れや、使用されている医療機器、設備、情報管理システムなど、実物を見ながらご説明いただいたことで、受講生の学びが深まりました。

第7回 講義「海外における医療機器管理の実情を知る~主にベトナムの最新情報 2025 年度版~」※オンライン開催

日時

2025年9月8日(月)14:00~16:00

講師

国立国際医療センター 臨床工学室 臨床工学技士長 深谷隆史氏

内容

講義では、まずこれまでとこれからの国際協力について、お話いただきました。ベトナムでは、世界から国際協力の援助を受け、医療水準も高くなってきている一方で、多すぎる医療機器の管理に対しての課題に直面しています。後半では、その課題に対して、臨床工学技士が行っている国際協力の取り組み(研修事業 DOHA(Direction of Healthcare Activities)など)や JIHS の国際展化推進事業について学びました。JIHS ではこれらの事業を通して、定期的にベトナムの各拠点機関を訪れており、実際の写真を見せていただきながら、現地の現状を学ぶことで、受講生の学びがより深まりました。現場では、日本の臨床工学技士のような資格制度がなく、技術職人が機器の修理を担当していたり、古い機器を使用し続けていたりしているため、今後は安定した保守管理システムの構築を目指し、医療機器管理体制の整備を進めていく必要があると感じました。