令和5年度 医工連携人材育成講座 開催レポート

~医療機器産業への新規参入、事業拡大のための中核人材育成に向けて~

パンフレット

第1回「医工連携の概論」

日時 2023年6月6日(火)16時00分~18時00分

講師

谷下 一夫 氏  一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ 理事長
柏野 聡彦    東京都医工連携HUB機構 プロジェクトマネージャー

内容

第1回の医工連携人材育成講座は、日本橋ライフサイエンスビルディングにて3年ぶりに会場で開催しました。

開会では、東京都産業労働局商工部 技術調整担当課長 川道克祥の挨拶に続き、昨年度まで第10回の講座「これからの医工連携」で講師を務めていただいた至仁会 グループ介護老人保健施設「遊」施設長で東京女子医科大学先端生命医科学研究所 研究所特任顧問の伊関洋氏と東京電機大学 名誉教授/東京大学 名誉教授で東都大学 幕張ヒューマンケア学部 臨床工学科 客員教授の土肥健純氏からご挨拶をいただきました。土肥氏にはビデオで受講生へのメッセージをいただきました。続いて東京都医工連携HUB機構プロジェクトマネージャーの柏野聡彦からオリエンテーションがあり、10回の講座についての説明と、受講者に対して実施した事前アンケートの結果が共有されました。

第1回の講座は、一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ理事長の谷下一夫氏と柏野が講師を務めました。谷下氏からは「医工連携概論~医療機器幻想からの脱却~」というテーマで講義をいただきました。 講義では、日本医工ものづくりコモンズ発足からの医工連携の動きを各種報告書を引用しながらの解説と、学会、医療機関、自治体等の取り組みが紹介されました。医工連携の課題にも触れ、対等な立場での異分野仲間づくりを提唱している日本医工ものづくりコモンズのコミュニティの活用を呼びかけました。柏野プロジェクトマネージャーからは「医工連携の概論 ものづくり中小企業による無理なく円滑な医工連携」をテーマとした講義がおこなわれ、東京都医工連携HUB機構の設立からこれまでの歩み、ものづくり企業による医療機器産業参入の道筋や医療機器メーカーとの連携の仕方、マッチングからコラボレーション創出に向けたプロセスとポイントが挙げられました。医療機器開発を円滑に進めるためのポイントや発想力を高める方法、ChatGPTの活用方法など医工連携を推進するためのコツなどが紹介されました。

講義の終了後は全体での写真撮影や名刺交換をするなど受講生同士が交流する機会となりました。

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第2回「医療機器の保険収載の基礎 前編」

日時 2023年7月4日(火)16時00分~18時00分

講師

河原 敦 氏  薬事コンサルタント

内容

薬事コンサルタントの河原敦氏を講師にお迎えした「医療機器の保険収載の基礎 前編」では、制度の要点を理解しやすく解説いただきました。

前編では、保険診療とは何か、関連する法令、医療機器の保険上の評価、申請等の手続き上の留意点など医療機器の保険適用希望の制度的枠組みを中心とした内容でした。実務的な説明もあり、保険収載の大枠を学ぶ機会となりました。

一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ理事長の谷下一夫氏からは、「出口戦略を入り口で考えることが東京都医工連携HUB機構の医工連携人材育成講座の狙いであり、開講早々の第2回にこの講座がある。前編と後編との2回で『医療機器の保険収載の基礎』をしっかりと学んで欲しい」と、受講生への励ましのお言葉をいただきました。

参加者からの質問も多く、後編の内容に関係するものは後編で触れることとなりました。

 

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第3回「医療機器の保険収載の基礎 後編」

日時 2023年7月19日(水)16時00分~18時00分

講師

河原 敦 氏  薬事コンサルタント

内容

第3回の医工連携人材育成講座は、薬事コンサルタントの河原 敦 氏による「医療機器の保険収載の基礎 後編」についての講義がおこなわれました。

前編に続いて医療機器の保険適用希望の制度的枠組み、診療報酬改定の枠組み、保険適用希望等の戦略上の要点について解説いただきました。保険収載の戦略を検討する上でのポイント、実務的な助言、具体的な事例を踏まえた内容となり、前編と後編とを通して医療機器の保険収載の基礎の大枠を学ぶ機会となりました。

講義の後の質疑応答では、具体的な質問が多く寄せられ、時間の許すかぎり河原氏にご回答いただきました。

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第4回「医薬品医療機器等法の基礎」

日時 2023年7月26日(水)16時00分~18時00分

講師

大竹 正規 氏  一般社団法人米国医療機器・IVD工業会 診断・治療機器委員会 委員長

内容

第4回の医工連携人材育成講座では、一般社団法人米国医療機器・IVD工業会 診断・治療機器委員会 委員長の大竹 正規 氏をお招きし「医薬品医療機器等法の基礎 〜基本と動向、押さえるべきポイント〜」をテーマにご講演いただきました。

講義では、薬事の視点、診療報酬の視点、プログラム医療機器について解説いただき、薬機法の基本、医療機器の特徴、クラス分類と申請区分等、申請手続きなど実践に役立つ内容がカバーされました。また、昨今、注目が集まるプログラム医療機器やAIについては押さえておくべきポイントや動向などが盛り込まれました。

一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ理事長の谷下一夫氏は、大竹氏の講演から「ゴールを見据えたリバースプランニングが重要である」という点、テーマのとおり薬機法についてのわかりやすい解説に加え開発が活況なプログラム医療機器について押さえておきたいポイント等が触れられた点などを挙げ、参加者にとって理解を深める貴重な機会となり今後の企業活動に活かされることに期待を寄せました。

質疑応答では、柏野プロジェクトマネージャーのファシリテーションのもと、講演の内容を振り返りながら大竹氏からさらなる助言をいただく形でおこなわれました。

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第5回「医療機器流通の実際」

日時 2023年8月2日(水)16時00分~18時00分

講師

矢部 文明 氏  株式会社ホギメディカル 営業管理部 次長

内容

第5回では「医療機器流通の実際 ~医療機器を売るために知っておくべきこと~」をテーマに、株式会社ホギメディカル 営業管理部 次長 矢部 文明 氏にご講義いただきました。

日本の医療機関を取り巻く環境、医療機器産業の現状と流通経路、病院内の販売フローと関係法規、マーケティングの重要性など、国内の医療機器産業特有の産業構造や商習慣の全体像からわかりやすく解説していただきました。

質疑応答では、KOLや学会、販売会社との連携の仕方など、日頃の課題を中心とする質問に対し、具体的な事例を挙げながらご回答いただくなど、実践的なディスカッションがおこなわれました。

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第6回「医療機器分野への参入・医工連携の実践」

日時 2023年8月9日(火)16時00分~18時00分

講師

宮尾 達也 氏  デリスネコン合同会社

波田野 真人 氏  安井株式会社

内容

第6回は、デリスネコン合同会社 代表社員の宮尾達也氏と安井株式会社 開発部の波田野真人氏を講師にお招きし、異業種からの医療機器産業参入、医療現場のニーズをもとに製品化を実現したプロセス、市場展開するにあたって直面する課題への挑戦についてご講演いただきました。

宮尾氏からは、手術室に配属された看護師として解決すべき課題を見出し、特許の取得、製販企業と医師との連携により製品化を実現。その過程で東京都医工連携HUB機構が提供する支援をどのように活用したかをご紹介いただきました。

波田野氏からは、同社が自社の基盤技術で部品の製造から医療機器産業に参入し、自社製品を製造販売、国内外への市場を開拓するなど、実践的な医工連携についてお話しいただきました。

質疑応答では、連携主体の出会いのきっかけや製品についての技術的な質問などが寄せられました。 受講生にとって医療機器産業への参入と医工連携の実践を事例から学ぶ機会となりました。

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第7回「医療従事者と医工連携 看護師・診療放射線技師・臨床工学技士」

日時 2023年9月13日(水)16時00分~18時00分

講師

村山 陵子 氏  看護理工学会 常務理事 藤田医科大学 保健衛生学部 教授

樋口 壮典 氏  公益社団法人日本放射線技術学会 東京支部 東京慈恵会医科大学附属第三病院 放射線部

仲條 麻美 氏  東京都臨床工学技士会 医工連携部会長

内容

第7回の医工連携人材育成講座では、看護師、診療放射線技師、臨床工学技士、3名の講師をお招きし、「医療従事者と医工連携」をテーマにご講演をいただきました。

藤田医科大学 保健衛生学部 教授で、看護理工学会 常務理事の村山 陵子 氏からは看護理工学とものづくり、看護師の立場からの看工連携(産学官連携)、ご自身が関わってこられた研究・開発事例についてお話いただきました。

続いて、東京都臨床工学技士会 理事・医工連携部会長で、順天堂大学医学部附属 順天堂医院 臨床工学室の仲條 麻美 氏からは、臨床工学技士の役割と医療機関内で多様化する臨床工学技士の関わり方の変化、東京都臨床工学技士会による医工連携への取り組みなどが紹介されました。

公益社団法人日本放射線技術学会 東京支部、東京慈恵会医科大学附属第三病院 放射線部 樋口 壮典 氏からは診療放射線技師として取り組んだ医工連携による製品開発、そこからの学びについてお話しいただきました。また、東京都医工連携HUB機構に診療放射線技師のニーズが複数掲載されていることを挙げ、こうしたニーズの存在を広め解決していくために樋口氏が学術団体の中で推進する医工連携活動についてご共有いただきました。

一般社団法人日本医工ものづくりコモンズの谷下一夫先生からは、医療従事者による医工連携への取り組みが活発化し、その活動も広がりつつあることに期待を寄せるコメントがありました。

医療従事者による医工連携の取り組みが組織的な動きに発展していることや、ニーズを起点とする医療機器関連製品の開発の可能性について学ぶ講座となりました。

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第8回「世界の先端を切り開く医工連携のポテンシャル」

日時 2023年10月3日(火)16時00分~18時00分

講師

光嶋 勲 氏  広島大学病院形成外科科長

内容

第8回の医工連携人材育成講座では、世界の先端を切り拓く医工連携のポテンシャル」をテーマに 広島大学病院 形成外科科長 国際リンパ浮腫治療センター寄附講座 教授  光嶋 勲 氏を講師にお招きしました。

失われた体の復元としておこなわれてきた指や足など体の部位の再建を超微小外科手術の国内外での症例の解説、実際の手術で使われる医療機器、超微小外科のこれからの発展において必要になる医療機器などをご紹介いただきました。

一般社団法人日本医工ものづくりコモンズ理事長の谷下 一夫氏からは、光嶋氏が触れた新しい手術のアイデアが生まれた背景と、次世代を担う医師への手技の継承についての話題が挙げられ、ディスカッションがおこなわれました。

また、受講生との質疑応答では、形成外科領域での手術支援ロボットについてなどの質問が挙げられました。

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第9回「特許と中小企業の資金調達」

日時 2023年10月18日(水)16時00分~18時00分

講師

神谷 直慈 氏  かみや特許事務所 弁理士・中小企業診断士

荒木 浩明 氏  株式会社FUNDINNOシニアマネージャー

内容

第9回の医工連携人材育成講座は「特許と中小企業の資金調達」をテーマに、かみや特許事務所から中小企業診断士で弁理士の神谷 直慈 氏と、株式会社FUNDINNO シニアマネージャー 荒木 浩明 氏を講師にお招きしました。

神谷氏からは「企業価値を高める知財」というテーマで、企業価値と知的財産についての解説、医療機器開発における知財戦略、医療機関との円滑な知財連携についてご講義いただきました。

荒木氏からは、「中小企業の資金調達」というテーマで、中小企業とベンチャーの違い、医療機器業界を取り巻く資金調達の実際、資金調達の選択肢、中小企業が挑戦した株式投資型クラウドファンディングの事例などを解説いただきました。

2人の講師の講義により、知的財産と資金調達との関係についても受講生が理解を深められる機会となりました。

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第10回「これからの医工連携・医療機器開発の展望・期待」

日時 2023年11月29日(水)16時00分~18時00分

講師

植木 賢 氏   鳥取大学 医学部医学科 医学教育学講座 医学教育学分野 教授

前島 洋平 氏  オルバヘルスケアホールディングス株式会社 代表取締役

内容

第10回の医工連携人材育成講座は、「これからの医工連携・医療機器開発の展望・期待」 をテーマに鳥取大学 医学部医学科 医学教育学講座 医学教育学分野 教授 植木 賢 氏とオルバヘルスケアホールディングス株式会社 代表取締役で兵庫県立大学 特任教授の前島 洋平氏を講師にお招きしました。

植木氏からは、機器開発とイノベーション教育に関してご講演いただきました。鳥取大学での取り組み、具体的な開発事例、自身が発案された「発明楽」という「発明を生む4つの技術」を実際に新しい機器等の開発コンセプトの考え方としてご紹介いただきました。

前島氏からは、 医師であり医療機器商社の視点から、医療機器と医療機器販売業の特性、医療機器販売業者が参画する医工連携、医療安全と医工連携、海外展開、これからの医工連携についてご講演いただきました。医療機器販売業の日常的な活動、市場を知るためのプロセス、具体的な機器開発と開発段階ごとにおさえておくべきポイントなどがわかりやすく解説されました。

講演後は、東京都医工連携HUB機構プロジェクトマネージャーの柏野によるファシリテーションで、2人の講師を交えてのディスカッションがおこなわれ、本年度の医工連携人材育成講座の最終回が締めくくられました。

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